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「香澄さん?」
「貴方、普通より鼻が利くから」
紅い唇が近付いて来る。――気持ち悪い。鼻も、喉も痛い。
「何倍も濃縮した匂いだもの。大体私と貴方じゃ、決定的に合わないし」
身体ごと重なる。我慢出来ず突き飛ばした。倒れる様な力なのに、香澄さんは易々と立ち直った。
「げほっ…うぇ、っぐ」
むせた。合う合わない以前に、この人――
「判った?中身は変えてねぇから、『俺』」
男だ。身体も心も、化粧と服で繕ってるだけで完全に。
「何も知りもしねぇくせに、興味本位に香月に近寄るな」
力一杯引っ叩かれた。
どうやって店に帰ったか記憶がない。
「だから言ったろ」
香月さんの顔見たら、無性に泣けてきた。
「こらイヌスケ。……ガキみたいに懐くな」
意味が違うけど黙ってた。
『意地悪言わないの。一人きりの姉じゃない』
『オレに姉なんざいねぇよ』
何で気付かなかった、こんな単純なからくり。
――姉は香月さんだ。
「貴方、普通より鼻が利くから」
紅い唇が近付いて来る。――気持ち悪い。鼻も、喉も痛い。
「何倍も濃縮した匂いだもの。大体私と貴方じゃ、決定的に合わないし」
身体ごと重なる。我慢出来ず突き飛ばした。倒れる様な力なのに、香澄さんは易々と立ち直った。
「げほっ…うぇ、っぐ」
むせた。合う合わない以前に、この人――
「判った?中身は変えてねぇから、『俺』」
男だ。身体も心も、化粧と服で繕ってるだけで完全に。
「何も知りもしねぇくせに、興味本位に香月に近寄るな」
力一杯引っ叩かれた。
どうやって店に帰ったか記憶がない。
「だから言ったろ」
香月さんの顔見たら、無性に泣けてきた。
「こらイヌスケ。……ガキみたいに懐くな」
意味が違うけど黙ってた。
『意地悪言わないの。一人きりの姉じゃない』
『オレに姉なんざいねぇよ』
何で気付かなかった、こんな単純なからくり。
――姉は香月さんだ。
ファンタジー
公開:20/01/30 21:41
香害(こうがい):
香りによるアレルギー、健康被害
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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