紡香師(ほうこうし)弐拾捌~体身香

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「体身香(たいしんこう)?……お前に?」
「金は払います。一回分だけ」
「相手の女は。誰でも良いわけじゃねぇんだろ」
うさん臭そうな眼が、責める様な眼になった。
「……香澄か。やめとけ大火傷するぞ」
「成人の男っすよ。責任くらい自分で取る」
違う、憐れむ様な眼。飼い犬を心配する飼い主の眼。
「勝手に後悔しろボケスケ」

――これでいい。手に入れば謎が解ける。

『体身香。楊貴妃も愛用した飲むお香。長期間飲み続ける事で、身体から芳香を放つ様になる。香月なら、一度でより高い効果を発揮する……意中の相手だけを落とす香も調合出来るわ』
体臭が恋愛感情を誘発するなら、相手が好む様に、体臭を上書きすれば良い。歪んだ理屈だ。
『体身香を持って来たら、大切な事を教えてあげる』


風邪薬みたいなカプセルを、長い爪が摘まむ。
「素直で一途でお馬鹿さん。だから私、貴方が大嫌い」
――ぷちん。カプセルが潰れた。
ファンタジー
公開:20/01/30 20:31

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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