さよなら

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 誰もいなくなった駅の床を掃除していると、かわいた、あるいは湿った、大きな、あるいは小さな、色も、形も様々な「さよなら」が散らばっていることに気づく。たいていの「さよなら」は他のゴミと混ぜられ、そのまま捨てられる運命だが、ときどきやけに目に焼き付いて忘れられない「さよなら」が落ちていることがあって、そんな日は床に就いてから悲しい夢を見るのが常で、死んだおばあちゃんのことなんか思い出したりする。そう、「さよなら」ばかりなんだ、駅って場所は。
その他
公開:20/01/30 18:46

六井象

超短編小説を中心とした、短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/

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