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鄙びた村の辻に、郵便ポストにそっくりの祠が祭られていた。それは東京でよくみかける一歩足の四角い形で、投函口までついていた。
「これはポストですか?」と畑にいたお婆さんに尋ねた。お婆さんは豪快に笑って教えてくれた。
「ポストじゃねえ。ポストだったんだぁ」
「珍しいですよね。ポストにそっくりな祠。何をお祭りしてあるのですか?」
「茶色い封筒だぁ」
お婆さんは手拭を取って、その茶色い封筒の話をしてくれた。
「子供の頃ポストがあってぇ、その上にな。茶色い封筒が重石してのっけてあったんだぁ。中味はだぁ~れも知らねぇ。赤紙じゃねぇか。血判状じゃねぇか。訴え状じゃねぇか。そんな噂もあった。雨ンなれば当番で覆いをしてなぁ。ポストが新しくなる時はみんなで一列んなって、前の奴を目隠ししてぇ。一番後ろが、あっちの一本杉まで並んだよぉ。たいそうなお祭りだったぁ。一昨年ポストがなくなるからって祠を建てたんだぁ」
「これはポストですか?」と畑にいたお婆さんに尋ねた。お婆さんは豪快に笑って教えてくれた。
「ポストじゃねえ。ポストだったんだぁ」
「珍しいですよね。ポストにそっくりな祠。何をお祭りしてあるのですか?」
「茶色い封筒だぁ」
お婆さんは手拭を取って、その茶色い封筒の話をしてくれた。
「子供の頃ポストがあってぇ、その上にな。茶色い封筒が重石してのっけてあったんだぁ。中味はだぁ~れも知らねぇ。赤紙じゃねぇか。血判状じゃねぇか。訴え状じゃねぇか。そんな噂もあった。雨ンなれば当番で覆いをしてなぁ。ポストが新しくなる時はみんなで一列んなって、前の奴を目隠ししてぇ。一番後ろが、あっちの一本杉まで並んだよぉ。たいそうなお祭りだったぁ。一昨年ポストがなくなるからって祠を建てたんだぁ」
ファンタジー
公開:20/01/28 21:04
宇祖田都子の話
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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