紡香師(ほうこうし)拾陸~ふるめきしずか

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喫茶店に差し向かいの、超絶美形と、平凡大学生。俺、引き立て役感半端ねぇ。
「冷めないうちにどうぞ」
「……すいません。俺、最初ん時、気付かず失礼な態度……」
俺より身長あって、スーツにグラサン、体系フラットで声も凛々しくて。
女の人だって誰が思う……。
「慣れております」
グラサンを外した月峰さんは、直視し難い美人だ。男装の麗人って、こんな普通に存在するんだな。
「しかし、蘭奢待とは大仕事ですね。あれは幻に近いはず」
「秘密厳守って、詳しく教えてくれなくて。伽羅(きゃら)って香木の、更に高級なやつだって」
「歴史的価値も高く、値段は付けられません。原木は正倉院に保管されております」
「正倉院……学校で習いました。お宝が一杯あるって」
「香りは『古めきしずか』と評されます。時の権力者がこぞって重用し、様々な謂れがございます」
「たとえば」
「切り取ると不幸を招く、とか」
思わず生唾を呑んだ。
ファンタジー
公開:20/01/28 20:05
更新:20/01/28 20:10

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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