つばさの行方

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「頼もう!」
大声と共に道場の門が破られた。
「ここに護身剣の達人がいると聞いた。真剣にて手合わせを願いたい」
そう言って土足で道場に入る男はまるで抜身の剣。触れれば斬り捨てられる…そんな雰囲気を出していた。
誰もが男に近づけない中、師範が勝負を受けると言い出した。
師範は齢88歳。門下生を優しく見守る好々爺が勝負を受けた。
誰もが師範を止めたいが恐ろしくて出来ない。
勝負が始まる。皆が固唾を飲む中、男が師範に切りかかった。
師範はその剣筋を軽くいなすと鍔で受け止め、押し返した。
男は再度切りかかる。しかし何度やってもその鍔で押し返される。
ついに男は膝を着いた。
「お前さんの剣は見事じゃ。だが鍔使いがなっておらん。この勝負、儂の鍔差勝ちじゃ」
男は師範に頭を下げ、己が剣の道を示してほしいと頼み込んだ。
護身剣を極めた男は後に「剣の道は鍔差の行方が肝心」と弟子達に言い聞かせるようになった。
公開:20/01/28 18:39

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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