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その人が入店した途端、背中がざわついた。
「店主さん、呼んで下さる?」
「い、今すぐ……」
蚊の鳴く様な声で奥に駆け込む。
「熱でもあんのかイヌスケ。顔赤いぞ」
かったるそうに表へ出た香月さんが、ふんと鼻を鳴らした。
「何だ香澄(かすみ)か」
「ご挨拶ね、お客に向かって」
お水系グラマー美女。低めの甘い声も色っぽい。でも、それだけじゃない。
「バイトの子?可愛いわね、よろしく」
ドキドキする。体温も息も上がる。完璧にタイプでもないのに、ぐっとくる。――何だ。何なんだこの人!?
「良かったら、今度いらして」
名刺を受け取って限界が来た。
「坊やには強過ぎたかしら」
「わざとだろお前。用量守らねぇなら、売るのやめるぞ」
トイレの中、前屈みで動けない耳に、不穏な会話が飛び込んでくる。
「意地悪言わないの。一人きりの姉じゃない」
「オレに姉なんざいねぇよ」
――香月さんの、姉?
胸がざわついた。
「店主さん、呼んで下さる?」
「い、今すぐ……」
蚊の鳴く様な声で奥に駆け込む。
「熱でもあんのかイヌスケ。顔赤いぞ」
かったるそうに表へ出た香月さんが、ふんと鼻を鳴らした。
「何だ香澄(かすみ)か」
「ご挨拶ね、お客に向かって」
お水系グラマー美女。低めの甘い声も色っぽい。でも、それだけじゃない。
「バイトの子?可愛いわね、よろしく」
ドキドキする。体温も息も上がる。完璧にタイプでもないのに、ぐっとくる。――何だ。何なんだこの人!?
「良かったら、今度いらして」
名刺を受け取って限界が来た。
「坊やには強過ぎたかしら」
「わざとだろお前。用量守らねぇなら、売るのやめるぞ」
トイレの中、前屈みで動けない耳に、不穏な会話が飛び込んでくる。
「意地悪言わないの。一人きりの姉じゃない」
「オレに姉なんざいねぇよ」
――香月さんの、姉?
胸がざわついた。
ファンタジー
公開:20/01/28 13:30
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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