秒殺の伊右衛門

4
5

 伊右衛門は裏垢女人の痴態を描いた春画をひらいた。むくむくと浅間山の噴煙のように劣情が湧く。絵師にこんなものを描かせるとは余程の好き者に違いない。伊右衛門は糞返信をしたためた文を飛脚に届けさせた。

「ひとたび、まぐわいたく候」 


 伊右衛門は裏垢女人と午の刻に逢うことになった。渋谷村の戌の像の前である。伊右衛門は目を疑った。似せて描いたという春画とまるで違う。

「あゝ、それは雪と云ふ絵師に描かせたものよ」
「す、すのう!?」


 伊右衛門は御麩把蠱にて裏垢女人に己の一物をおさめた。刀を鞘にいれる要領である。熱い。まるで宝永の富士の大噴火のようだ。伊右衛門は堪らず、秒で精を放った。


「え、もう!?」
「すまぬ、涅槃に逝ってしまった。お主の観音様の功徳ゆえ」


 啓蟄の頃、裏垢女人から伊右衛門のもとへ羅印が届けられた。

『梅の毒の病にかかったゆえ、薬師に相談されよ』
その他
公開:20/01/27 21:32
更新:20/01/28 10:52

千億アルマ( Tokyo, Japan )

Senoku ALMA
https://note.com/shiro_mid

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容