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「私、鶏肉が大好きなんです」

彼女は俯きながら、けれどもはっきりと言った。
鶏は唖然としていた。鶏肉好きがいることは分かっていた。しかし、まさか面と向かって告白されるとは思ってもみなかったのだ。鶏はただ彼女を見据えていた。目が合って思わず逸らした。
「ごめんなさい、突然」
「……いや、出荷された連中が無駄死にじゃないって、思えるよ」
「私のこと、怖いですよね」
「どうかな。この感情が何なのか、分からない。でも……」
「でも?」
「まだ食べられたくないんだ。分かってる、今が一番、筋肉も内臓も美味しいって分かってるんだけど」
「大丈夫です!私、待ってます!鶏肉だったら、年齢とか部位とか関係ない!」
「……ありがとう」
「ずっと、好きでいてもいいですか?」

彼女は焼鳥の串を咥えて去っていった。鶏にはそれがセセリであるとすぐに分かった。次に会うときには、この感情の名前を明らかにしたいと思った。
その他
公開:20/04/08 08:20

G.G. Rooster( 東京 )

じーじーるーすたー。

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