コップ一杯分の家族

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生前はとにかく邪魔なだけだった。
小さい頃は可愛かったが成長するにつれ図体はデカくなり、餌欲しさに私の膝に乗って来る。
私がいくら呼んでも来ないのに、あいつが「にゃー」と一声鳴けば私は呼ばれるままにあいつの相手をする。
私が欲しいと願った猫なのにそれも数年すると「何でこんなの欲しがったんだろう…」と後悔し始めた。
お気に入りの服をボロボロにされた。 寒い日はその毛皮で私を温めてくれた。
病院に連れて行ったり薬を飲ませるのが大変だった。 私が風邪を引いた時、ずっと寄り添っていてくれた。
そんなあいつが亡くなって、その遺体を焼いた。遺骨はコップ一杯分にしかならなかった。
生前はあんなに場所取ったのに今はえらく小さくなったものだ。
その事実に私は笑った。 その事実に私は泣いた。
あいつとの思い出がこんなコップ一杯に収まるはずがないだろう。
その思い出が私の瞳からあふれ出す。
あいつに会いたいよ…
公開:20/04/06 19:18

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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