フルール・ド・リュス亭の亡霊

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 今からざっと三百年ほど昔のイギリスのお話である。
 当時、イギリスでは王位継承問題から起きたモンマス公の反乱が鎮圧されたばかりという物騒な時期だった。そんな政治の混乱期にあっても、一般庶民のやることは変わらない。働いて、食って、吞むのだ。サマセット州にある居酒屋フルール・ド・リュス亭にも、ちょうど一人の旅人がぶらりと入ってきたところだった。酒が入ると誰にでも話しかける陽気な呑んべえである。
 男は店の裏手から果樹園へ入っていく一団を見ると、楽しげに席を立った。実はその一団というのは処刑のために連行されてきた反乱軍の捕虜だったのだが、男はそんなことも知らずに、開いた門扉を人のいい笑顔で押さえてやった。すると監視に押されて、自分まで果樹園の中にある処刑場に連れて行かれたばかりか、そのまま誤って処刑されてしまった。
 三百年以上経った今も、店にはその男の亡霊がふらりと赤ら顔で現れるのだという。
ホラー
公開:20/04/06 17:16
更新:20/04/06 17:17
実話ベースの創作です ちょっとした小話 習作

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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