谷口君の背負う業

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真面目な谷口君が掃除をサボった。生徒会長の谷口君が。堅物で有名な谷口君が。メガネの谷口君が。翌日、私が教室に入るとやはり谷口君が掃除をサボった事で持ちきりだった。「ねー聞いた?谷口の」「聞いた聞いた。谷口掃除サボったんでしょ?」「俺はアイツいつかやらかすと見てた」「メガネだしな」「何で脱走したんだ?」「バイトとか?」「あー、親に先立たれ小さい兄妹養ってそう」「それな」「メガネだしな」「実は世界に危機が迫ってて、谷口が掃除サボって世界救ってたとか」「確かに」「メガネだしな」皆好き勝手に噂している。そして、私は知っている。谷口君が掃除をサボったと言われる理由を。彼はメガネに覆われて気付かないが“地味„なのだ。昨日も掃除はしたが気付かれなかったのだろう。「気付かれなかったんだよね?」誰にも気付かれず佇む彼に問う。彼は寂しそうに言った。「ううん、バイトして兄妹養いつつ世界救ってた」あーそっちかー。
その他
公開:20/04/06 14:19
更新:20/04/06 18:09

不可解な付加価値

楽しんで書きたいです

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