箱庭家族

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「あなた、お疲れ様。ご飯の準備できてるわよ」
キッチンに向かう妻は結婚して25年も経つのに今でも美しい。リビングの扉を開ける。
「パパ、お誕生日おめでとう!」
高校生の娘と、大学生の息子の笑顔が俺を迎えた。
「覚えていてくれたのか」
「当たり前じゃん。私達の大切なパパだもん」
「俺達からのプレゼント」
ブランド物の財布だった。
「ふたりでバイトして買ったんだ」
俺は嬉しくて泣きそうになるのを堪える。
「ありがとうな」

深夜、俺はひとりパソコンに向かっていた。暗闇の中でスクリーンが光る。
最近はまっている『箱庭』という家族シュミレーションゲーム。なんて素敵な家族なんだ。いいなぁ。俺もこんな家族が欲しいなぁ。
うちの息子はニートだし、娘は口を開けば「ウザイ」「キモイ」だ。
突然、乱暴に扉が開くと、太って醜くなった妻が「ちょっとアンタ!皿洗ってないよ!ちゃんとやっといてよね!」と俺に怒鳴った。
その他
公開:20/04/07 13:33
更新:20/05/05 02:25
〇〇家族

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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