モブ家族

政府はモニタリングの為、ひとつの普通の家族を選び出した。

莫大な量の情報から選び出した平均の収入、平均の家族構成、平均の顔立ち、平均の生活。
それは、彼ら一家がこの国の縮図と言って差し支えない程の『平均さ』であった。
だが、すぐに問題が起きた。
父親を追っていた筈の顔認証システムが対象を見失う。
娘を見張っていた筈が気付けば別の女子高生と入れ替わっている。
息子をつけていた調査員から息子がいないと連絡が来る。
家にいた筈の母親が買い物から帰って来る。

事態は調査団に混乱を招いた。
どこをどう見ても普通。
普通以外の言葉が選べない程の普通。
それが仇となり特徴が無さすぎて人混みに紛れると見分けがつかないとは。

「おかえりなさい、あなた」
「ただいま。子供達は？」
「もう寝てるわ」
-ところで
-ああ、気付かれない様に気を付けて
-最近、物騒だから
-不自然にならない様に
-普通に普通に