シャボン玉旅行

22
21

人間ひとりを包み込めるほど大きなシャボン玉の中で、桜舞う風に吹かれながらふわふわ空を浮いている。
特殊な石鹸と糊が開発されて、どれだけ高度が上がっても割れないシャボン玉が出来上がった。
石鹸と糊、水の分量を調整することで、あらゆる重量にも耐えられるし、シャボン玉の中に包み込まれても空気不足にならない。そして、ある程度の高さまで上がると次第に降下して着地点で割れる構造になっている。
透明なシャボン玉の中から下界を見下ろすと爽快な気分になれて、まるで自分が鳥と同じように飛んでいると感じられる。
これまで多くの人たちがシャボン玉で冒険に出ていて、雲海の中を水泡のようにぷかぷか浮いたり、ジェット気流に乗って世界一周したり、大気圏まで往復した猛者もいる。
ただ、シャボン玉旅行を終えた数日間は、地上にいるにもかかわらず身体が宙に浮いたような感覚が残ってしまい、頭の中も上の空になってしまうのが玉に瑕だ。
その他
公開:20/04/05 06:55
シャボン玉 石鹸 雲海 ジェット気流 大気圏 上の空

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容