蜜柑

　蜜柑は、温暖な気候で育つ日本で人気の果実である。山の斜面に降り注ぐ穏やかな陽光をたっぷり吸収して、凝縮したような、健康的な明るい色合いをしており、テニスボールよりもやや扁平な、手のひらに乗る手頃なサイズである。
　底部の中心に親指をずぼっと押し込むと、簡単に外皮が破れ、そこから花びらを開くように剥いていくと、薄い半透明の膜に包まれた三日月状の実が、輪を描くようにくっついてボール状になったものが姿を現す。その一つ一つの実を指で切り離し、そのまま口に入れて食すのだ。
　半透明の膜はやわらかく、歯で噛み切ると、中に詰まった果汁たっぷりの小さな粒々が一斉にはじけて破れ出てくる。水々しい甘さが豊かに舌を潤し、鼻の奥には独特の清涼感が抜けていく。一つの実を食べると、すぐに次の一つを口に放り込んで、食べたくなる。
　旬の季節は冬とされるが、その味は、日本の夏の湿潤さと太陽の恵みを思い出させてくれる。