遺電子家族
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俺の父さんはVRだ。
脳腫瘍末期、遺電子技術でVR転送された。生体ゲノムと海馬メモリ、思考回路を電子変換、プログラムとして再構築する。
電離処置室の空っぽのベッドに、ヘッドセット姿で縋り付く母さんを見て、これは父さんの葬式だと俺は思った。チェアビジョン越しに母さんの手入力画像を食べ、VRルームから家族旅行に出掛け、学校行事はまるで遺影のモニタ参加。電子アルバムに並ぶ写真、順当に年取る俺達の横で、父さんだけがコピペ状態に浮いてた。
何年かぶりに実家へ帰った時。
玄関開けた俺を、震える声で母さんが呼んだ――父さんの名前で。
ヘッドセットは外してた。VRルームも暗かった。モニタの代わり、知らない男と並んだ写真が飾ってあった。
Delete.Y/N
夜中、モニタ前で迷った。VRに殺人罪は適用されない、でも――
Y.
押してないキーが動いた。
俺そっくりの顔が、モニタの向こうで笑って消えた。
脳腫瘍末期、遺電子技術でVR転送された。生体ゲノムと海馬メモリ、思考回路を電子変換、プログラムとして再構築する。
電離処置室の空っぽのベッドに、ヘッドセット姿で縋り付く母さんを見て、これは父さんの葬式だと俺は思った。チェアビジョン越しに母さんの手入力画像を食べ、VRルームから家族旅行に出掛け、学校行事はまるで遺影のモニタ参加。電子アルバムに並ぶ写真、順当に年取る俺達の横で、父さんだけがコピペ状態に浮いてた。
何年かぶりに実家へ帰った時。
玄関開けた俺を、震える声で母さんが呼んだ――父さんの名前で。
ヘッドセットは外してた。VRルームも暗かった。モニタの代わり、知らない男と並んだ写真が飾ってあった。
Delete.Y/N
夜中、モニタ前で迷った。VRに殺人罪は適用されない、でも――
Y.
押してないキーが動いた。
俺そっくりの顔が、モニタの向こうで笑って消えた。
SF
公開:20/04/03 22:47
〇〇家族
隕石家族
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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