バーチャル家族

「今日の晩御飯どうする？」
パソコン画面の向こうから尋ねられ、威勢良く「ハンバーグ！」と答えた。しばらくしてスピーカーからジュージューと焼ける音と共に芳ばしい香り。それをアテにコンビニで買ったビールを一口ゴクリ。不意に背中が痒くて孫の手でゴシゴシやると、その手が動いてこちょこちょされた。
「くすぐってえなあ、誰だイタズラするのは？」
孫の手に内蔵されたスピーカーから「僕だよ！」と可愛い声が聞こえた。
クスクス笑い合っていると、ピンポーン！と玄関のチャイムが鳴る。宅急便で荷物が届いた。そのタイミングでテレビのスイッチがオンになり、画面に30代くらいの男の顔が映る。
「今日誕生日だろ？ハッピーバースデー！」
届いたのは俺の誕生日プレゼント。中を開けると新しいパソコンだった。
「これで画面が増えたな。もう何人か新しい家族が増やせるぜ！」
独り身の俺は我儘だと知りつつ本当の家族が欲しいと思った。