昔の紙芝居

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昭和30年初め頃まで自転車で紙芝居のおじさんが回ってきた。拍子木の音に子供達があっという間に20人は集まる。
集まった子供達に飴玉等を売っていく。子供達は大事そうに握りしめていた5円玉を渡し、飴をもらい始まるのを待つ。
お金は無いが紙芝居は見たい子供が、電柱の陰等に隠れて見ようとすると目ざとく見つけ「ただ見」はダメだと叱り、立ち去るまで始めなかった。
声色混じりで絵に合わせ得意の話術で子供達を引き込み、佳境に入った所で続きはまた明日になる。完結は無くデジタル文化のない時代には、目の前のライブ感は相当のものだった。紙芝居が帰った後、
電柱の方から笑い声が聞こえた。どうしたのかと皆が振り向くと、ただ見はダメと言われた子供が紙芝居を見ていた。みんな来いよ、こっちの紙芝居は只で良いんだって。

貧しい子供に同情した狸が初めた「タヌキ芝居」としてその後は繁盛し、紙芝居のおじさんは来なくなった。
ファンタジー
公開:20/04/03 19:23
更新:20/04/08 14:29

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