影のようなもの

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 体が真っ黒になる特異体質にも参っていたが、これはさらに深刻な問題だった。
 物心ついた時には、それは私の背後にぴったりとついていた。決して離れず、どんな場所にも表れる。自分の体そっくりの輪郭で、いかなる時も私の足元に張り付いている。
 それは影だ、と言われたがどうも私には信じられなかった。
 なぜなら、日が真上にあっても消えないし、真っ暗闇でもはっきりと人型に見えるからだ。影は太陽の直下では丸形に見えるし、光のない場所では見えなくなる。
 私は精神に詳しい先生に聞いてみた。
「もしかして、私は幻覚でも見ているのでしょうか?」
「いいえ、あなたは重大な勘違いをしていただけですよ。あなたが今まで体だと思っていたものが影で、あなたが影だと思っていたものが体なんですよ」
 謎が解けた。どうりで私の体は他人よりも黒いはずだ。
SF
公開:20/04/04 21:11
更新:20/04/05 16:43

ゆぅる( 東京 )

お立ち寄りありがとうございます。ショートショート初心者です。
拙いなりに文章の面白さを追求していきたいと思って日々研究しています。
よろしくお願いします!

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