時計のつぶやき

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公園に建てられた時計台。それが私だ。
昔、携帯電話なんてなかった時代、私の下には多くの人が集まった。
私を見上げてはそわそわして溜息を吐く。待ち人が来ると嬉しそうに笑顔の花を咲かせるが、終ぞ来なかった時にはまるで萎れた花のように肩を落とし帰って行く。
私はそんな人々にこっそりと声をかけていた。
時計の下にスピーカーが付いているだろう。あれは時報を伝える為だけに付いているわけではない。
誰もいないのにふと声が聞こえた、なんて体験をしたことないだろうか?
あれは私がその人にだけ聞こえるよう囁いているんだ。
だがそれも昔の事だ。今は皆、スマホ片手に耳にはイヤホン。私を見上げる事もなければ私の声が届く事もない。
はぁ…今度は私が肩を落とす番だ。
全員がこっちを向くように大声で叫んでやろうか?
なんて考えていた時だ。鼻がむずむずして大きなくしゃみをしてしまった。
皆が、驚いた顔で私を見つめていた。
公開:20/04/04 18:51

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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