魔法の杖

その魔法使いは変わり者だった。秘匿の存在である魔法を人々に知ってもらおうと思っていた。
そうしないと魔法は廃り、過去のものとなってしまう。この奇跡の技を後世に伝えなければ…
そう考えた変わり者の魔法使いは人々に魔法を教える事にした。しかしそれを許さない魔法使いが大勢いた。
変わり者の魔法使いは捕らえられた。そして変わり者の魔法使いが所持する魔法に関する一切が燃やし尽くされた。
変わり者の魔法使いは魔法の力と魔法に関する記憶を消される事になった。

魔法使い達は気付いていなかった。
変わり者の魔法使いはすでに人間達に魔法の本を授けていたのだ。
その名も「魔法の杖」。
イエスかノーかで答えられる簡単な質問に本が答えてくれる。誰もそれが魔法の力とは思ってはいまい。
変わり者の魔法使いの思惑通り、多くの人に魔法が広まった。
しかし今、電子書籍の波により、その魔法もまた風前の灯火と化している。