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夫が頑固なのは父譲りらしい。いや、石津江家は先祖代々頑固一徹。近頃の軟弱男子とは大違い。
そんな所に惚れたのだから、今更ではあるのだけれど。
まさか、離乳食で石を食べさせるとは思わなかった。
「石津江の男なら大丈夫だ」
コクリと小石を飲み込み、息子は平然としていた。
「ほらな」
得意気に言って、夫は卵ほどの大きさの石をゴクリと飲み込んだ。
やっぱり、この家はおかしい。
なんで石を食べて平気なの?
普通、腹壊すでしょ。離乳食から鍛えられてるから石も消化出来るの?
しかし、先祖代々続く伝統に口を挟めるわけもない。息子の健康が心配な私は、息子用の石をよく似たチョコレートに取り替えて息子に食べさせ続けた。
やがて息子が成人し、国の礎を担う夫の仕事を引き継ぐ時がやってきた。
甘党でぽっちゃりの息子が、夫の代わりに地下に潜った。
ぐらりと地面が揺れた。

それから日本は浮島となって太平洋を漂っている。
ファンタジー
公開:20/04/01 18:24
更新:20/04/01 22:39

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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