循環

　すくってもすくっても補充される金魚。
少年は思った。
「金魚たちはいったいどこから来るのだろう」
水面に豆電球の灯が映ってきらきら輝いている。夏祭りの夜店で、少年たちが金魚すくいに興じている。
「やったあ、とれた」
「はいどうぞ」
透明の袋に入れられた和金は、水の中に真っ赤な尾をひきながらたゆたう。うろこを光に透かしながら、りんご飴のようなほっぺたをした少年はうっとりと眺める。

　さて、月経時の少女たちだけを集めたひみつのプールの授業がある。ねっとりと粘性を帯びた特別の液体のなかで遊ぶ少女たちは経血を「放流」するのだ。すると忽ち、それは水槽のなかを自由に泳ぎ回る金魚と化す。
　赤いほっぺの少年はしかし、金魚鉢のなかをぐるぐるただようように泳ぐ金魚が果たしてどこからやってきたのか、知る由もない。