粋夢着

5月のある平日の午後7時すぎに宅急便が届いた。袋を開くと黒い短パンが入っている。カツオはしばらくそれを眺めた。履いてみるとサイズはまあまああっていた。それは水着だった。
ネットで注文したのを忘れたのか、買った覚えもない。不気味に思い、2ヶ月ほどタンスの中で放っておいた。

夏になると子どもらとポートアイランドのプールへいく。ちょうど太って前の水着は入らなくなつていたので、あの水着を持っていった。
プールでしばらく子らと遊んでいたら、人々が騒ぎ始め、
気づいた子どもたち。
「お父さん、水着が…ぬげてる…！」

送り主は、同僚の田中だ。職場で何かと突っかかってくるカツオがうっとおしかった。
水に溶ける糸で水着を作って、嫌いな人宛に贈ったのだ。

小太りのカツオを目視し、ヒップサイズは大体見当がついた。


カツオはびっくりし、悔しそうにあわてて前を隠し小走りで更衣室に向ったのだった。