1
2

もうそろそろ時間だ。
そう思った僕は、お守りを一つ箱の中から取り出した。
このお守りがないと、これから立ち向かう大きな壁を前にして、心が折れてしまう。
その小さな包みを握りしめて、「大丈夫、大丈夫。」と震える声で繰り返す。
これから起こる試練の前に、何度こうやってきただろう。
頑張って心を落ち着けていると、遂に始まりを告げる声が聞こえた。
最後に大きく息を吐き、僕はその声に返事を返す。
「また胃薬持ってきたのね。胃が強い子に産めなくてごめんなさい。」
「大丈夫、そんなことないよ。きっとその内に問題なくなるよ。」
そう、そんなことはないのだ。
問題は、そこではないのだから。
さて今日の夕飯(試練)はなんだ!
頼むからハーブは適量であってくれ!
お肉はちゃんと火が通してあってくれ!
そうして今日も食後にお守りを使うことになるのだった。
お父様、たまには会社の人とではなく僕と外食しませんか…
その他
公開:20/04/01 19:09

ハル・レグローブ( 福岡市 )

趣味で昔から物書きをのんびりやってます。
過去に書いたもの、新しく紡ぐ言葉、沢山の言の葉を残していければと思います。
音泉で配信されているインターネットラジオ「月の音色 」の大ファンです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容