呑み家族

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私の働いている居酒屋『朗楼』は路地裏の小さな老舗だが、あまり人気はない。大将と女将さんから近々店を閉めるという話しもあった、二人とも高齢で店を続けるのも限界なのだろう。
閉店当日、しみじみとした心境でいたら、常連さんが三人滑り込みで入って来た。
「よかった間に合った!」
「本当ね、閉店なんて吃驚したわ」
「二人とも言ってくれないなんて酷いですよ」
この人達は古株の常連さんだ。お通しを出して注文を聞く。
「レモンサワーを三つですね」
女将さんに注文を伝える、するとこんな声が。
「美月ちゃんも呑んだら?」
女将さんからも呑んでいいよとの声。
「もう終わりだからいっそ皆で呑みましょう、ねえ、あなた!」
大将を呼ぶ女将さん、六人で最後の晩餐が始まった。こうしていると年代のせいか家族団らんの様に見えてくる、そう言ったら皆それは良いと大笑いしてくれた。温かい誰もが家族を思い出すそんな場所だったんだな。
その他
公開:20/04/01 19:04

癒月連理( 岩手 )

2020.3.16にこの場所を見つけて、長文を書くのが苦手な私でもショートショートなら挑戦できるかなと思い、投稿を始めました。

このショートショートガーデンで書くことの楽しさを知る事ができました。
自分なりに色々文章を模索していきたいと思います。
作品を読んで気になった事がありましたら、是非コメントをお願いします、厳しいコメントもお待ちしています。

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