入学式は特Aで

桜が咲きこぼれる校門から手を振っているのはユウキママだ。ケンの手を引いて、小走りに駆け寄る。
ママ友たちのファッションはブラック、ネイビー、アイボリー、やはり定番カラーだ。
「ケンママのコシヒカリ、発色がきれい。どこ産のを借りたの？」
「実は、これ自前なんだ」
「え、マイコシヒカリ！」ママ友たちは色めき立つ。
「実家がねー魚沼なのよ」
米食離れが進んで、売上が落ち込んだ米農家は品種改良により、アパレル生地へと生産をシフト。コシヒカリのしなやかさと光沢を生かした丈夫な生地でフォーマルウェアの製造を開始。特別な日のコーデはやっぱり穀物協会認定の特A銘柄で。ただし、サブスクが主流。着やせ効果はウエストの光沢次第とあって、ママたちの視線も熱い。
「ちょっと」一人が私をママたちから引き離して耳打ちする。
「後ろにノリついてる」
「タックの糊が？ヤダ、太ったの私」
「違う、海苔。朝、お米なのね」