『春の雪』 意転

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娘が一人暮らしを始める。
引っ越しのトラックを見送る妻の横顔に俺は微笑みかける。
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」
「うん。でもそうじゃなくて、寂しいのかな、私。思ったよりも」
俺たちは二人で娘の部屋の窓を見上げた。
「あれ」
「へえ……春の雪だね」
珍しいモノに妻の顔が綻ぶ。だがその雪はすぐに消えていく。
「寂しいね。こんな儚い雪になにか意味があるのかな」
返答に困る。けど俺は言った。
「意味とかは分からないけど、こんな雪でも世の中には歌に詠んだり、曲にしてその歌を愛する人が沢山いる」
人は天の気紛れで舞い降りた、本来意味のないモノにも意味を見い出し、その人なりに楽しもうとする。
「捉え方次第、自分次第ってわけね」
うなずく俺に妻はお茶にしましょ、と家に入る。そして、お菓子をいくつか出した。
「うん、丁度同じ数ずつね。割り切れて楽だわ」
はは、娘よ。こっちは結構大丈夫かもな。
青春
公開:20/03/31 22:05

とーしろさん

はじめまして~。
いつだって初心で、挑戦者のこころでぶっ込みたい素人モノ書きです。

沢山の方々に支えられ、刺激を与えられ、触発されて今日ももちょもちょ書いております。
一人だけでは生み出せないモノがある。
まだ見ぬステキな創造へ、ほんの少しずつでも進んでいきたい。

ショートショートというジャンルに触れる切っ掛けをくださった、
月の音色と大原さやかさんを敬愛し感謝しております。

興味をもって読んでくださる全ての方にも、ありがとうございます~^^

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