幸せな蚕

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 理科部の課題で蚕を飼育していた。
 蚕の幼虫は食欲旺盛で、家に届いた当日から桑の葉をひたすら食べていた。食べる、寝る、食べる、時々脱皮して、また食べる。ある日突然糸を吐き始めたかと思えば繭に閉じこもり、そして今日とうとう繭の中から成虫が出てきた。
 蛾の一種にも関わらず、純白の体に黒いつぶらな瞳を持つ、愛らしい体。
「君は本当にかわいそうだ。虫かごに一人きり。空も飛べない。おいしい食べ物も食べられない。しかも一週間ちょっとで死んでしまう」
 情が移って、ついこんなことを口走ってしまった。すると、どこからともなく声がした。
「わたしは生きるのに不便な体で生まれてきた。でも、不便であって不幸じゃない」
「どうして? 君はどう見ても……」
「いいえ。わたしはあなたのような心優しい人に出会えて幸せ。成虫になるまで育ててもらえて幸福よ。だって、ほとんどの蚕は繭になった段階で茹で殺されてしまうもの」
ファンタジー
公開:20/03/31 21:15

ふぅる( 東京 )

お立ち寄りありがとうございます。ショートショート初心者です。
拙いなりに文章の面白さを追求していきたいと思って日々研究しています。
よろしくお願いします!

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