帰ってきたあいつ

帰ってきた、帰ってきたよ。
興奮して叫んだのは洗剤。あわあわして、滑りそう。無理もない。５日の不在の後、待望の復活を果たしたんだからスタアにもなる。
「お帰り」「お帰り」
陳列されるなり、周囲の祝福が熱すぎてトイレットペーパーはやや蒼白。
「待ってたよ、変わりない？」と早速、芳香剤。
「匂い立つな。帰ってきたばかりじゃないか」、ブラシは毛を逆立てる。
「ここにトイぺーがいなかったなんて初めてだったし。空の棚が沁みたって」
「やあもう、来る人来る人口々に君がいつ帰ってくるかと」
「君のために並んでるよ、お客さん。君を一人しか連れて帰れないって、ヤバす」
「まあまあ。久々にみんな揃ったんだもん。ゆったり包み込もうよ。一重も二重も芯までね」と便座マット。

同じ日時に入荷して、この温度差。医学研究所の多角化戦略第一弾なのに、トイレ紙より地味な扱い。米粉の美白パックはきりりと身を揉んでいる。