感情増幅器

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 ハカセは黒い帽子のような装置を持って待っていた。
「こんな夜更けに一体何です!?」
「見てくれ、これは感情増幅器。脳の特定の神経を電気刺激し、今抱いている感情を強める機械だ。頭にかぶって頭頂部のボタンを押すだけでいい」
「で、どんな時に役に立つんですか? ハカセ?」
 私はあくびをしながら感情増幅器をつつく。カンという乾いた音が響いた。
「映画や絵画、劇を見るときなんかにぴったりだ。より作品に入り込める。特許も取得済み。きっとこの手の芸術産業の投資家たちに高く売れるだろう」
 そうですか、と言って私はその帽子をふんだくり、かぶった。
「ちょっと君!?」
「嘘だったら承知しないですからね」
 頭の上のボタンを押した。すると、ハカセへの怒りが体の底から湧き上がってきた。
 深夜に無理やり起こしやがって、熟睡してる時が私が一日の中で一番幸福なひと時なのに!
 私は慄く博士の首に手をかけ……
SF
公開:20/03/31 20:13
更新:20/03/31 20:14

ゆぅる( 東京 )

お立ち寄りありがとうございます。ショートショート初心者です。
拙いなりに文章の面白さを追求していきたいと思って日々研究しています。
よろしくお願いします!

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