大御所薬

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 商店街で客引きに声をかけられた。いつもなら素通りするところだが、今日は違った。
「サプリメントの無料キャンペーンを実施しています! この粒を飲めば誰でも大御所として扱われます。退屈とは無縁の日々を送れますよ」
「それは――」
「ぜひお試しください」
 突然、喉元を円形の何かがくぐる感覚がした。客引きはすでに跡形もなく消えていた。
 直後、青年の周りに人だかりができた。
「大御所だ!」
「あれ本物!?」
 何とか群衆から抜け出し自宅に戻る。
 スマホを確認する。『125件のメッセージを受信しました』との文字が画面に表示された。その殆どは青年への誹謗中傷。
「大御所ってこんなに大変だったのか!?」
 間もなくパトカーのサイレンが聞こえてきた。何が何だかわからない。恐る恐るテレビをつけると、見慣れた社員寮が移り、テロップにこう書かれていた。
「犯罪界の大御所、ついに追いつめられる!」
SF
公開:20/03/31 19:46
更新:20/03/31 20:22

ゆぅる( 東京 )

お立ち寄りありがとうございます。ショートショート初心者です。
拙いなりに文章の面白さを追求していきたいと思って日々研究しています。
よろしくお願いします!

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