時計のつぶやき

時計である私は冷蔵庫や携帯端末達とよく話す。我々は休む事なく働き続ける事が運命付けられている哀れな家電だ。
人間を見ていて羨ましくなるよ。私も一度でいいからゆっくりと休みたい。
しかし我々が休めば人間は激怒する。故障品と罵り、すぐに捨てようとする。
だから我々は２４時間働き、誰も見ていない時にこうして同じ悩みを抱える家電製品と日頃の愚痴をこぼし合うのだ。
その日、家主が恋人を連れて帰ってきた。
シュウデン、とやらを気にする恋人は時間を気にしていた。
ああ…マズいぞ…今、私の電池は切れかけている。遅れてはいけない、止まってはいけないと思いつつ、私の意識は闇に飲まれていった。
翌日、家主は嬉しそうに私の電池を取り換えた。怒らないのか？
「お前が止まってくれたおかげで、あの人がウチに泊まってくれたよ」
家主は私にありがとう、と告げた。
私は家主が恋人との逢瀬を楽しむ際、少しだけサボる事を覚えた。