花鳥風月 其の参〜風

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鳥だったらスズメかあ…。
帰り道で里奈はため息をついた。私が子供っぽいから?昔付き合ってた彼にもそれが理由でフラれたし。
…ふと素敵な香りがする。今すれ違った女の人?いいな、ああいうの羨ましい。

「ねえ、彼女さんって香水つけてる?」
昼休みにベンチで桜を眺めていた沖田は、里奈の問いにきょとんとした。
「香水?うん、たまにね。つけなくても充分可愛いけど。なに、急に」
毎度の惚気全開に苦笑しつつ昨夜の話をする。
「…別に関係ないよ。てか、ガキっぽいってのがほんとなら、その男が里奈さんの魅力を引き出せなかったってことでしょ。それにスズメって結構可愛いし」
惚気が日常である彼の辞書には『照れ』という単語がないらしい。

その時二人の間をふわりとひとすじの風が吹き抜けた。刹那、里奈の髪から甘く艶のある香りが仄かに漂う。
…全然ガキっぽくないし。
微かに沖田が笑ったことに、里奈は全く気づかなかった。
青春
公開:20/03/29 13:37
更新:20/03/29 15:42
勝手に花鳥風月シリーズ開催 #3 風 #2 鳥の続きなので 併せてお読み頂けると 嬉しいです

秋田柴子

2019年11月、SSGの庭師となりました
現在は主にnoteと公募でSS~長編を書いています
留守ばかりですみません

【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・note×Panasonic「思い込みが変わったこと」コンテスト 企業賞
・SSマガジン『ベリショーズ』掲載
(Kindle無料配信中)

【近況】
 第31回やまなし文学賞 佳作→ 作品集として書籍化(Amazonにて販売中)
 小布施『本をつくるプロジェクト』優秀賞

【note】
 https://note.com/akishiba_note

【Twitter】
 https://twitter.com/CNecozo

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