芽の意味を知らない。

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みんなは、庭に現れた、新緑の芽を見ても大賑わいだ。でも僕は違った。僕だけは違った。なぜなら、僕は知っているからだ。

その芽はようやく日の目を見たのだ。種が地中にある間、僕は猪や鹿に荒らされないように、ずっと監視していた。種が腐らないように、土の状態を念入りに確認していた。僕が褒め称えられたいわけでもない。芽はそうした水やりや土壌が育て上げた、大事な大事な芽なのだ。

だから、そうも知らずに、芽吹いた新緑の芽に群がるのは、滑稽だ。芽は土壌が豊かでなければ育たない。芽は水やりがなければ育たない。

24年と5ヶ月と15日目。

日の目を浴びた芽は「才能」と名付けられ、一役有名になっていった。
その他
公開:20/03/28 22:10
更新:20/04/01 07:14

蒼井 一

『日本語の美しさを体感したい、体現したい』
物語が好きです。よろしくお願いします。

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