想起ナビ

　田舎道を独りでドライブしている途中、「はっきりしない色のハンドボールくらいのサイズのボールが、泥のこびりついた茶色のプランターにぎちぎちに詰め込まれている」映像が浮かんだ。
　そのイメージには、レモネードのシュワシュワという音と、犬の匂いとが付属していた。でも、それがいつどこでどのような状況下での記憶なのか、もしかしたら、映画で見たり小説などを読んで想像しただけのものなのかは思い出せなかった。
　しかし、プランターの半分が日向にあって影が反対側に長く伸びていたのと、「とてもいびつだな」と言っている自分の声を想い出し、膝の痛みと、ふくらはぎと太ももの間の汗ばんだ感じと、麦わら帽子のせいでチクチクするおでこの感じを、芋づる式に想い出していった。
　もう少しで、それがどこなのかが分かりそう！　と思った時、カーナビがポーンという電子音を響かせ、
「目的地付近です。ナビを終了します」
　と言った。