一言の思い

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「私の思いを書きました」
 そう言うと、サチエはトモナガに封筒を差し出した。
 サチエは22歳で、周りから一目置かれる存在だ。一方、トモナガは40を過ぎた人事部の部長で、妻も子供もいる。
「……困るよ、急にこんなもの……」
「でも、もう我慢できないんです! こんなに苦しい思いは!」
「だからといって、これは……」
 トモナガははぁ、とため息をついた。これが若気の至りか、と観念しながらも、封筒を受け取る。サチエの真剣なまなざしを見ると、本気のようだ。
「……わかった、考えておこう」
「考えておこう、じゃないですよ! 失礼します!」
 サチエはそういうと、部屋から出てドアをバタン、と強く閉めた。

 残されたトモナガは、封筒の中身を見て、さらに深いため息をついた。
 サチエの強すぎる思い。

「一身上の都合により、退職します」
その他
公開:20/03/29 21:50

フィーカス

短編掌編をよく書いています。
時々何かに入賞したりします(2回)。
わけのわからない世界観を生み出したいです。

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