茶色いうみ

会社から帰宅すると、息子の健斗と母は眠っていた。残業で遅くなったのだ。食卓に母が作った晩ご飯と一枚の絵が置いてあった。健斗のだろう。茶色のクレヨンで塗りつぶしてある。私は晩ご飯とお酒を飲みながら、その絵を眺めていた。なんの絵かなぁ……。

私は健斗と手をつないで街を歩いていた。
「ママ、海につれていってあげる」
「海？　健斗がつれていってくれるの」
その海は、茶色い海だった。
「チョコレートの海なんだ」
「チョコレート？」
そういえば甘い香りが漂ってくる。波打ち際で確かめるとトロトロのチョコレートだ。健斗はポシェットからビスケットを取り出した。
「はいママ。どうぞ」
「ありがとう」
私と健斗はビスケットをチョコレートフォンデュにして食べた。

私は食卓で眠っていたようだ。あ、この絵は私が大好きなチョコレートの海なんだ。
その裏にメッセージが書いてあった。

『ママおたんじょうびおめでとう』