夜の無い国

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この国は夜が来なかった。
空はいつも青く、時計を見て今が昼か夜かを判断する。
国民は夜の存在を本で知っていたが、空想の産物だと信じなかった。

その日、どうしても夜を見たい1人の子供が、人々の寝静まった”昼”にこっそりと集めた梯子を使い、空へと昇って行った。
一段ずつ慎重に上り、風に揺られると心臓がバクバク音を鳴らしたが、汗も拭かずに昇り続けた。
途中から空が近くなった気がする、それこそ手を伸ばせば届きそうだ。

腕を思いっきり伸ばして空に触れる。

青空はひんやりして、まるでガラスのようだ。
そして、触れた空にヒビが入り、少しずつ崩れ始める。
降り始めた空のかけらは星のようで、段々と空は暗くなり、崩れ去った青空は夜空になった。
この国に”夜”が訪れた。
その他
公開:20/03/27 15:12

べね( 千葉 )

私の作品を読んで頂きありがとうございます。

趣味でショートショートを書いています。
だいたい即席で書いているので、手直しする事が多々あります。
多忙のため更新頻度はとても低いです、ごめんなさい。
星新一さんや田丸雅智さん、堀真潮さんの作品に影響を受け、現実感のある非現実的な作品を書くのが好きです。
最後の1文字までお楽しみください。

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