降れよ、夕立(3/5)

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ひだまりの似合うショートヘア。勢い良く駐輪場から出た彼女は、そのまま土手の坂道を降る。通りの両側には、緑の稲が揺れている。
メガネに水滴がつく。
「雨降ってきたみたいだね」
「ほんと??」
彼女のスピードが少し落ちた。ひだまりのショートヘアは、曇天の風で乱れている。街中に入る交差点まで来て、初めて赤信号で自転車を止める。交差点を挟んで右手前の薬局には、客がまばらに入っている。
「翔くん、まっすぐ?」
「そう、この先の踏切まで」
青に変わった信号機の方から、白い空気が迫ってくるのが見えた。
「雨降ってきた、うわぁ〜」
雨はますます激しくなった。前を走っていた彼女の姿すら、薄っすらとしか見えない。視覚も聴覚も雨で鈍り、まともに自転車を漕ぐことができない。正直、雨をなめていた。
「雨宿りする?」
「え?雨宿り?」
大声でそれだけ言葉をかわし、僕らは雨宿りすることにした。
青春
公開:20/03/27 14:51
更新:20/03/30 06:37

蒼井 一

『日本語の美しさを体感したい、体現したい』
物語が好きです。よろしくお願いします。

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