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 一週間の旅行から戻ってきた。特急券と自由席券とを自動改札へシュッと通すと、ゲートの向こうに切符が一枚飛び出てきた。僕は流れでその切符を手にとってから「おや?」と思い、駅構内のカフェスタンドへ向かった。
「いらっしゃいませご注文は?」
「ブレンドのホットエスを」
「260円です」
 僕は片手に熱い紙コップを持ち、スーツケースを転がしてイートイン風の多目的スペースの席へ腰かけた。そこへ、間髪を入れずに制服の男が来た。
「切符を拝見します」
「あ、はい」
 と僕は反射的に、先ほど戻ってきた切符を出した。制服の男は、時計を見ながらその切符にスタンプを押すと、
「結構です」
 と去っていった。
 スタンプには、日時の他に「1」と「飛田」という文字。
「まさか、これからも検札があるのか……」

 それ以来、僕はこの切符を肌身離さず持ち歩いている。スタンプは「23」になり、制服の男はいつも「飛田」だ。
その他
公開:20/03/27 11:48

新出既出20( 浜松市 )

新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。

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