京華鏡

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ある古刹の境内で骨董市をやっていたので立ち寄ってみると、年代物の万華鏡を見つけた。
店主に尋ねてみると、京華鏡と呼び、平安時代より貴族や公家が代々所有してきた玩具で、これが最後の一品だという。
店主の説明を聴きつつ、京華鏡を左に左にと回しながら覗くと、四季折々の美しい風景に切り替わり、どれも京都の観光名所ばかりだ。これは掘り出し物だと思い買い求めた。
帰り道、京華鏡を逆に回すとどうなるか店主に訊きそびれたと思い出し、少しだけ右に回して覗くと、セピア色の京都の情景に切り替わった。懐かしい気分になり、よく見れば、鴨川沿いの河川敷を大学の友人と歩く、卒業式後の自分のようだった。
さらに右に右にと回し続けると、不意にかちっと音がして、右には動かなくなった。目を凝らして覗けば、平安時代に活躍した陰陽師の安倍晴明とおぼしき人物が、今完成したばかりと思われる京華鏡を手に取り、霊力を加えている姿があった。
その他
公開:20/03/28 06:26
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山田衆三( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育ち、大学時代は京都(御所の近く)、大学院時代は湘南(海ではなく山側)で過ごす。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年06月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。

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