黄藤人

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散歩中、調子こいて道を外れ、迷子状態の俺。いやむしろ方角見失った時点で遭難じゃね?うん、そうなんだ~的なヤケクソ気分で森を突っ切ってると、正面から光が射した。
「どうなすったんです?」
光の先から声。完全に怪しさMAX。しかしお先真っ暗な俺、これ以上暗転もないだろうと声の方へ。
「すんません、道に迷ったっぽくて……」

絶句。
「それはお困りですね」
内容と噛み合わないおっとり声の、かぐや姫みたいな古典美人が、後光を背負ってらっしゃる。
「ど、どちら様で?」
「きふじと申します」
「貴婦人?」
「黄色い藤で、黄藤。この木の精です」
名前はいいから道聞け俺。自分にツッコむ暇もあらばこそ。黄藤の人は背負った後光――に見えた黄色い花枝を、一本下さった。
「どうぞ」
「……どうも」
欲しいのは道案内。言うだけ無駄そうなので早々に通過した。
枝がナビなんて事はもちろんなく、半日掛けて自力で脱出した。
ファンタジー
公開:20/03/27 00:40
散歩道で見た シーズン2-⑩ キフジ(またはキブシ)の木

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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