時計のつぶやき

長い年月をかけ、道具に宿ると言われる付喪神。百鬼夜行絵巻を見てみるとその道具達は思い思いの姿形を取っている。
五徳が頭に付いている付喪神。手杵に蛇の体と人の腕が2本付いた付喪神。千差万別だ。
さてこの私、時計の付喪神もまた、時計でありながらある生物の形をしている。ワニだ。
ピーターパンという童話は知っているだろう。そこに出てくるフック船長の天敵、時計ワニのモデルは実は私なんだ。
老化と衰えを恐れる大人達にひたひたと近寄っては時間という概念で丸呑みしてやろうと思っている。
夜、時計の音が気になってふと目が覚める事があるだろう。そして時計を手に取って見る。
その際、よ～く周りを見てほしい。
うっすらと巨大なワニの姿が見えてくるはずだ。
その時計は私の右目部分。左目にはお前の寿命が見えている。
故に私は死神とも言われていてね。
安心しろ。三途の川辺に来るまでは、まだ襲わないから…