柔らかな夜

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静寂に覆われ深い藍色に染まった月夜、僅かに覗く雲の輪郭に天使達が腰を下ろし、楽しげにシャボン玉を吹いていた。
吹口から生まれたシャボン玉は月明かりで七彩に色付く薄膜を纏い、それらがたゆたゆと舞う夜空は月の雫が散りばめられたようだった。
シャボン玉はゆらゆらと地表へ降り始め、やがて夜の街へ溶け込んでいく――


少女がいた。
枕元でうすら笑いを浮かべる悪魔が抱いた悪念は、安寧の海に浮かぶ少女の夢をうねる悪夢へと変貌させた。
捻られた夢に胸を圧迫され苦しげに息をする少女を見、悪魔は更に醜悪な笑みを浮かべる。


慢心する悪魔がシャボン玉に気付くことはなかった。頭上近づくシャボン玉は静かに割れ、七色の薄膜は雨霧となり悪魔を包みこんだ。途端悪魔は消え、少女の夢は再び静かな海へ誘われた。


悪魔の消え去った街はやがて静かに寝息をたて始める。雲上の天使達は微笑み合い、藍色の夜空に消えていった。
ファンタジー
公開:20/03/26 16:20
更新:20/03/26 17:05

てつじょ( 福島県 )

ショートショートや短編小説、推理小説辺りが大好物。今はホラーやミステリー、SFにはまり気味。完全趣味で小説を書き始めたんですが、短いものだけでも発表しようかなと3月18日より投稿開始。皆さん宜しくお願いします。

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