キャンディ草

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キャンディ草は春になると、名前の通り小さな可愛らしいキャンディを実らせる。口にいれた瞬間、爽やかな香草の香りが広がる。
「うぇぇ、変な味するぅ」
「優斗にはまだ早かったかなぁ?」
おばあちゃんは嬉しそうに顔を覗き込む。
「そんなことないもん」
男の子はキャンディを入れたままの口を紡ぎ、呼吸を整える。独特な香りは、肺を満たす。
「ん〜」
息を漏らせば、鼻から抜けていく。吸っても吐いても、空気は春の空気。
「やっぱ無理ぃ」
「それじゃあ、土に帰しておいで」
男の子は急ぎ足で、さっき収穫したキャンディ草の花壇に向かい、ペッと吐き出し、ササッと土を被せた。
おばあちゃんは嬉しそうな顔をして眺めている。
「来年はちゃんと食べるもん」
「来年もまたチャレンジね。それまでおばあちゃんがしっかり水くれしておくわ」
おばあちゃんは男の子を撫でながら、
男の子はおばあちゃんの手を握って、
室内に戻っていった。
その他
公開:20/03/25 08:00
更新:20/03/25 13:39

蒼井 一

『日本語の美しさを体感したい、体現したい』
物語が好きです。よろしくお願いします。

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