身の丈

散歩中、タケ林に来たから、ぼくは止まって手を合わせた。
お仏だんみたいに、ぱちんと合わせておじぎする。神社みたいなお願いとか、お墓みたいなお参りとかはしない。通る時のあいさつ。
タケ林に手を合わせるのが、うちの町のルール。合わせなくても、多分ばちは当たらないけど、いつもしてるのにしないのは、やっぱり気持ち悪いから。

タケ林のタケは、竹やぶの『竹』じゃなくて、背たけの『丈』なんだって。何本あるか、数えなくても分かるって言う。町の人と同じ数あるんだって。
ほんとかな？去年生まれたお隣の赤ちゃんも、引っ越した団地の子も、一昨年死んだおばあちゃんも、その分減ったり増えたりしてるのかな？お父さんやお母さんや、ぼくの木もあるのかな？
ほんとか分からないけど、タケ林の木は背が低い。高くて大人の身長くらいで、それ以上は見た事ない。
おじぎを終わって頭を上げたら、ちょうどぼくの背たけのが、目の前にあった。