師の恩に
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勤め上げた中学校の卒業式にて、三年生の合唱が終盤に差し掛かった時だった。
やっぱり聞こえる。
指揮台の上からゆっくりと見渡すと、教え子たちがそれぞれに真剣な眼差しを返してくる。合唱とは言え、みんなの声を聞き間違うはずがない。
いるはずのない子が一人。
しかもズレてる。音程もリズムも。
私は歌が下手だった。かすかに覚えているのは、音楽室で声を張り上げるのがひたすら楽しかったこと。友達が笑って、先生がさらに盛り上げてくれたこと。そして…。
あの子につられて、合唱が乱れる。
そっか。あなた達にも聞こえているのね。ふと緊張がとけ、頬がゆるむ。あの日の先生も同じだったのかしら。なら私も…。
くすり。歌声の一角が揺れて、波が柔らかく広がった。私は指揮台をダンと踏み鳴らし、教え子の一人ひとりと、もう一度、丁寧に目を合わせていく。いくよ、一緒にね。
やよ弾けよ。
いざ、さらば!
やっぱり聞こえる。
指揮台の上からゆっくりと見渡すと、教え子たちがそれぞれに真剣な眼差しを返してくる。合唱とは言え、みんなの声を聞き間違うはずがない。
いるはずのない子が一人。
しかもズレてる。音程もリズムも。
私は歌が下手だった。かすかに覚えているのは、音楽室で声を張り上げるのがひたすら楽しかったこと。友達が笑って、先生がさらに盛り上げてくれたこと。そして…。
あの子につられて、合唱が乱れる。
そっか。あなた達にも聞こえているのね。ふと緊張がとけ、頬がゆるむ。あの日の先生も同じだったのかしら。なら私も…。
くすり。歌声の一角が揺れて、波が柔らかく広がった。私は指揮台をダンと踏み鳴らし、教え子の一人ひとりと、もう一度、丁寧に目を合わせていく。いくよ、一緒にね。
やよ弾けよ。
いざ、さらば!
その他
公開:20/03/23 22:42
400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。
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