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「生まれ変わったら、猫になりたいな」
「じゃあ私も猫になって、また葵と恋をするね」
その夜、葵は死んだ。雨でスリップしたトラックに巻き込まれて。
黒い服の彼が見えなかったと、運転手は言った。
"生前の映像と再構築した音声データを駆使すれば、亡くなった人と『VR=仮想現実』で再会できる"
そんな実験に誘われ、VRなんてと思いながら断れなかった。
「さあ、会えますよ」
研究員に渡されたVRゴーグルを、恐る恐る身につける。
葵がいた。
二人の部屋で。
私に笑いかける。
リアルな指先。
懐かしい声。
でも…本物じゃない。
ゴーグルを外し、私は寂しく微笑んだ。
「よく…出来てますね」
手の届かない虚構は、ただただ苦しかった。
研究室から、重い足取りで帰る。
と、足元に温かいものを感じた。
「ニャー」
黒猫だ。
「…なの?」
猫はもう一度鳴くと、私の泣き顔を、その澄んだ瞳に映した。
「じゃあ私も猫になって、また葵と恋をするね」
その夜、葵は死んだ。雨でスリップしたトラックに巻き込まれて。
黒い服の彼が見えなかったと、運転手は言った。
"生前の映像と再構築した音声データを駆使すれば、亡くなった人と『VR=仮想現実』で再会できる"
そんな実験に誘われ、VRなんてと思いながら断れなかった。
「さあ、会えますよ」
研究員に渡されたVRゴーグルを、恐る恐る身につける。
葵がいた。
二人の部屋で。
私に笑いかける。
リアルな指先。
懐かしい声。
でも…本物じゃない。
ゴーグルを外し、私は寂しく微笑んだ。
「よく…出来てますね」
手の届かない虚構は、ただただ苦しかった。
研究室から、重い足取りで帰る。
と、足元に温かいものを感じた。
「ニャー」
黒猫だ。
「…なの?」
猫はもう一度鳴くと、私の泣き顔を、その澄んだ瞳に映した。
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公開:20/03/25 14:11
読んでくださりありがとうございます。
小学生の頃、「世界中の本をぜんぶ読んでしまったら退屈になるから、自分でお話を書けるようになりたいな」と思いました。
僭越ながら、子どもの頃の夢のまま、普段はショートショート作家を目指して、2000字くらいの公募に投稿しています。芽が出るといいな。
ここでは思いついたことをどんどん書いていこうと思います。
皆さまの作品とても楽しく拝読しています。毎日どなたかが更新されていて嬉しいですね。
よろしくお願いしますm(_ _)m
*2020.2〜育児のため更新や返信が遅れておりますが、そんな中でもお読みくださり、コメントくださり本当にありがとうございます!
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